B型肝炎は、血液だけでなく性行為によっても感染する可能性がある感染症です。
B型肝炎ウイルス(HBV)は感染者の血液や体液を介して感染します。
そのため、感染者との性的接触は主な感染経路のひとつです。
実際に、国立健康危機管理研究機構(JIHS)も、B型肝炎の主な感染経路として血液・体液との接触、性的接触、母子感染などを挙げています。
また、B型肝炎は感染しても症状が出ないことがあり、本人が感染に気づいていないケースもあります。
一方、B型肝炎には有効なワクチンがあり、感染を予防することが可能です。
この記事では、B型肝炎が性行為で感染する仕組みから、感染経路、症状、検査、治療、予防方法までわかりやすく解説します。
B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓に感染することで起こる病気です。
HBVに感染した場合、大きく分けると、
- 一時的な感染で終息する「一過性感染」
- ウイルスの感染が長期間続く「持続感染」
があります。
成人になってから感染した場合は、多くが一過性感染として経過しますが、一部では感染が持続することがあります。
持続感染すると、慢性肝炎や肝硬変へ進行する場合があり、肝細胞がんのリスクも高まります。なお、B型肝炎では必ず「慢性肝炎→肝硬変→肝がん」という順番で進むわけではなく、肝硬変に至っていない場合でも肝がんが発生することがあります。
また、感染していても自覚症状がないことがあるため、症状の有無だけで感染を判断することはできません。
B型肝炎は性行為でうつる?
B型肝炎は性行為によって感染する可能性があります。
HBVは感染者の血液だけでなく、精液や腟分泌液などの体液にも含まれることがあります。
感染性のある血液や体液が、性行為によって相手の粘膜や傷のある皮膚などに接触すると、ウイルスが体内に入り感染する可能性があります。
そのため、特にコンドームを使用しない性行為では感染リスクがあります。
また、出血を伴う性行為では血液への曝露が加わるため注意が必要ですが、出血がなければ感染しないというわけではありません。
HBVに感染している人は無症状であっても他人へ感染させる可能性があるため、見た目や体調だけで感染の有無を判断することもできません。
B型肝炎の主な感染経路
B型肝炎の感染経路は性行為だけではありません。
主に以下の経路があります。JIHSでは、血液・体液への接触、性的接触、母子感染などが主な感染経路とされています。
性行為による感染
感染者との性的接触によって、精液や腟分泌液、血液などの感染性のある体液が粘膜などに接触すると感染する可能性があります。
自分にHBVに対する免疫がなく、相手がHBVに感染している場合には特に注意が必要です。
血液を介した感染
HBVを含む血液が体内に入ることでも感染します。
例えば、
- 注射針や注射器を共用する
- 適切に衛生管理されていない器具でタトゥーやピアスを行う
- 医療現場などで針刺し事故が起こる
- 血液が付着する可能性のあるカミソリや歯ブラシを共用する
などが感染につながる可能性があります。
母子感染
HBVに感染している母親から、出産時などに赤ちゃんへ感染することがあります。
特に乳幼児期に感染すると成人後の感染より持続感染しやすいため、母子感染を予防することが重要です。
日本では妊婦健診でHBs抗原検査が行われ、母親の感染が確認された場合には、赤ちゃんへのワクチン接種やHBIG(抗HBs人免疫グロブリン)などによる母子感染予防が行われます。
キスや食事、お風呂でB型肝炎はうつる?
B型肝炎は、通常の日常生活で簡単に感染するものではありません。
例えば、
- 握手
- ハグ
- 通常のキス
- 一緒に食事をする
- 食器を共用する
- せきやくしゃみ
- 同じ場所で生活する
- 一緒に入浴する
などの日常的な接触によって感染するものではありません。
そのため、家族やパートナーがB型肝炎だからといって、日常生活上の接触そのものを避ける必要はありません。
ただし、歯ブラシやカミソリなど血液が付着する可能性があるものは共用しないようにしましょう。
B型肝炎に感染するとどんな症状が出る?
B型肝炎に感染しても、必ず症状が現れるわけではありません。
症状が現れる急性B型肝炎では、感染してから一定の潜伏期間を経て発症します。
JIHSによると、B型肝炎の潜伏期間は30~180日程度で、通常は90日程度です。
主な症状としては、
- 全身のだるさ・倦怠感
- 食欲不振
- 吐き気・嘔吐
- 発熱
- 腹部の不快感
- 尿の色が濃くなる
- 皮膚や白目が黄色くなる「黄疸」
などがあります。
症状が軽かったり、まったく症状がなかったりすることもあります。
一方、まれではありますが肝炎が急激に悪化し、急性肝不全など重篤な状態になることもあります。
B型肝炎が慢性化するとどうなる?
HBVの感染が持続した場合、すぐに症状が出るとは限りません。
症状がほとんどない状態が長く続くこともありますが、一部では肝臓の炎症が持続し、
- 慢性肝炎
- 肝線維化
- 肝硬変
- 肝細胞がん
などにつながることがあります。
ただし、すべての人が同じ経過をたどるわけではありません。
HBVへの持続感染が確認された場合には、症状がなくても定期的に肝機能やウイルス量、肝臓の状態などを確認することが重要です。
B型肝炎はどんな検査でわかる?
B型肝炎は、主に血液検査で調べます。
HBVへの感染や免疫の状態を調べる代表的な項目には、以下があります。
HBs抗原
現在HBVに感染している可能性を調べるための検査です。
HBs抗原が陽性の場合、急性または慢性のHBV感染が考えられます。
HBs抗体
HBVに対する免疫の状態を判断するために使われます。
過去の感染から回復した場合や、B型肝炎ワクチンによって免疫を獲得した場合などに陽性になります。
HBc抗体
過去または現在のHBVへの自然感染を判断する材料になる抗体です。
ワクチンの接種だけで免疫を獲得した場合には、通常HBc抗体は陽性になりません。
HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体を組み合わせることで、現在の感染、過去の感染、ワクチンによる免疫などをより詳しく判断できます。CDCでも初回のB型肝炎スクリーニングとして、この3項目を組み合わせた検査が推奨されています。
急性B型肝炎が疑われる場合には、IgM-HBc抗体などの追加検査が行われることもあります。
性行為の直後に検査すれば感染がわかる?
感染の可能性がある性行為の直後に検査して陰性だったとしても、感染していないとは言い切れません。
HBVに感染してから血液検査で変化を確認できるようになるまでには時間がかかることがあるためです。
必要な検査や再検査の時期は、
- 性行為からどのくらい経過しているか
- 相手のHBV感染状況
- 自分のワクチン接種歴
- HBs抗体の有無
- 過去の感染歴
などによって異なります。
そのため、検査時期については医療機関で相談することが大切です。
特に「パートナーがHBs抗原陽性だった」など、明確な感染機会があった場合は、検査で陽性になるまで待たず早めに医療機関へ相談してください。
性行為後にB型肝炎の感染が心配な場合は早めに受診する
HBs抗原陽性者との性行為など、HBVへの明確な曝露があった場合には、ワクチン接種歴や免疫の状態によって曝露後予防が検討されることがあります。
例えば、B型肝炎ワクチンを接種しておらず、感染者との性的接触があった場合などには、状況に応じてB型肝炎ワクチンやHBIGが使用されます。
曝露後予防は、できるだけ早く行うことが重要です。CDCでは、必要な場合には可能な限り早く、できれば曝露後24時間以内に開始することが推奨されており、性的曝露については予防効果が期待できる期間は14日を超えないと考えられています。
ただし、必要な対応はワクチン接種歴や抗体の有無、相手の検査結果などによって異なります。
自己判断で様子を見るのではなく、感染の可能性がある場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
B型肝炎を予防する方法
B型肝炎は、ワクチンなどによって感染リスクを大きく下げることができます。
B型肝炎ワクチンを接種する
B型肝炎を予防するうえで特に重要なのがB型肝炎ワクチンです。
厚生労働省によると、40歳までに接種した場合の抗体獲得率は95%と報告されており、3回接種後の感染防御効果は20年以上続くと考えられています。
日本では乳児のB型肝炎ワクチンが定期接種となっています。
成人でも、HBVへの免疫を持っていない場合にはワクチン接種を検討できます。特にHBV感染者の性的パートナーなどでは、検査とあわせて医療機関に相談するとよいでしょう。
コンドームを使用する
性行為では、コンドームを最初から最後まで正しく使用することでHBVの感染リスクを下げることができます。
ただし、コンドームを使用すれば感染を100%防げるわけではありません。
HBVへの免疫がない場合には、コンドームによる予防とあわせてワクチン接種を検討することが重要です。
血液が付着する可能性のあるものを共用しない
カミソリや歯ブラシなど、血液が付着する可能性があるものは共用しないようにしましょう。
タトゥーやピアスなどを行う場合も、器具の使い捨てや適切な滅菌など、十分な衛生管理が行われている施設を利用することが大切です。
パートナーがB型肝炎だった場合はどうすればいい?
パートナーがB型肝炎に感染していることがわかった場合は、まず自分のHBV感染状況や免疫の有無を確認することが大切です。
医療機関では、必要に応じて、
- HBs抗原
- HBs抗体
- HBc抗体
などを調べます。
検査によって、現在の感染だけでなく、過去の感染歴やワクチンによる免疫の有無などを判断することができます。
HBVへの免疫がない場合にはワクチン接種を検討します。
また、最近HBs抗原陽性者と性行為をした場合には曝露後予防が必要になる可能性があるため、検査できる時期まで待つのではなく、早めに医療機関へ相談することが重要です。
なお、通常の日常生活での接触を避ける必要はありません。
B型肝炎が陽性だったら治療が必要?
HBVへの感染が確認されたからといって、すべての人がすぐに抗ウイルス薬による治療を開始するわけではありません。
急性B型肝炎では、症状や肝機能などを確認しながら経過観察や必要な治療が行われます。
慢性B型肝炎では、
- 肝機能
- HBV-DNA量
- 肝臓の線維化の程度
- 年齢や病状
- 肝硬変の有無
などを総合的に評価し、必要に応じて核酸アナログ製剤などによる抗ウイルス治療が行われます。
治療の必要性は一人ひとり異なるため、HBs抗原が陽性だった場合には消化器内科や肝臓専門医などで詳しい検査を受けることが重要です。
日本肝臓学会では、2026年6月に「B型肝炎治療ガイドライン 第5版」を公開しています。
まとめ|B型肝炎は性行為でも感染するため、検査とワクチンによる予防が重要
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が血液や体液を介して感染する病気で、性行為も重要な感染経路のひとつです。
出血がなくても、感染性のある体液が粘膜などに接触することで感染する可能性があります。
また、B型肝炎は感染しても症状が現れないことがあるため、症状だけで感染の有無を判断することはできません。
感染が心配な場合は血液検査によって確認できますが、感染直後は検査で判断できない場合があります。
特に、HBs抗原陽性者との性行為など明確な感染機会があった場合には、検査時期まで待たず、できるだけ早く医療機関へ相談することが重要です。
B型肝炎には有効なワクチンがあります。性行為ではコンドームを正しく使用するとともに、HBVへの免疫がない場合にはワクチン接種を検討し、感染予防につなげましょう。


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