性行為のあとに
「急におりものが増えた」
「いつもと色やにおいが違う」
と感じると、性病(性感染症)ではないかと不安になる方もいるでしょう。
性行為後のおりものの増加は、性的興奮による分泌液や精液などが混ざったことによる一時的な変化の場合もあり、必ずしも性感染症を意味するわけではありません。
一方で、クラミジアや淋菌感染症、トリコモナスなどでは、おりものの増加や性状の変化が現れることがあります。特に、悪臭・黄色や緑色への変化・下腹部痛・排尿時痛・不正出血などを伴う場合には注意が必要です。
この記事では、性行為後におりものが増える原因や考えられる性感染症、受診したほうがよい症状について解説します。
性行為後におりものが増えるのは珍しくない
性行為後におりものが普段より多く見えること自体は、珍しいことではありません。
性行為の際には、性的興奮によって腟やその周辺から分泌液が増えます。また、腟内射精があった場合には精液が、コンドームを使用した場合でも潤滑剤などが腟分泌物と混ざり、性行為後に外へ排出されることがあります。
そのため、
- 透明〜白っぽい
- 強い悪臭がない
- かゆみや痛みがない
- 時間がたつと普段の状態に戻る
といった場合には、一時的な生理的変化である可能性があります。
ただし、おりものだけを見て「正常」「性感染症」と判断することはできません。
性感染症の中には症状がほとんど現れないものもあるため、感染する機会があった場合には症状の有無だけで判断しないことが重要です。厚生労働省も、性器クラミジア感染症や淋菌感染症では無症状の場合があるとしています。
性行為後におりものが増える主な原因
1.性的興奮によって分泌液が増えた
性的刺激を受けると、摩擦を減らすために腟周辺から分泌される液体が増えます。
性行為直後は、この分泌液がおりものと混ざるため、普段より量が増えたように感じることがあります。
色やにおいに大きな変化がなく、かゆみ・痛みなどもなければ、生理的な反応である可能性があります。
2.精液や潤滑剤などが排出されている
腟内射精があった場合、性行為後に精液がおりものと一緒に流れ出ることがあります。
また、コンドームや潤滑ゼリーに使用されている潤滑剤が混ざることもあります。
このため、性行為直後から翌日にかけて「白っぽいおりものが増えた」と感じることがあります。
3.性行為の刺激によって一時的に分泌物が増えた
性行為による摩擦や刺激によって、腟や子宮頸部からの分泌物が一時的に増える場合があります。
摩擦が強かった場合には粘膜が傷つき、少量の出血がおりものに混ざって、薄いピンク色や茶色に見えることもあります。
ただし、性交後の出血を繰り返す場合や出血量が多い場合には、子宮頸部の炎症やポリープなど別の原因も考えられるため、婦人科を受診しましょう。
4.排卵など月経周期による変化
おりものは月経周期によっても量や性状が変化します。
特に排卵期には、透明でよく伸びるおりものが増えることがあります。
性行為のタイミングと排卵期が重なったことで、「性行為をしたから増えた」と感じる場合もあります。
おりものが増えたときに考えられる性感染症
性行為後のおりものの変化に加えて、におい・色・痛みなどの異常が続く場合には、性感染症による子宮頸管炎や腟炎なども考える必要があります。
代表的なものを紹介します。
性器クラミジア感染症
性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスという細菌による性感染症です。
女性では症状をほとんど自覚しないケースも多く、症状がある場合には、
- おりものの変化
- 下腹部痛
- 不正出血
- 性交時痛
などが現れることがあります。
厚生労働省も、女性では自覚症状が乏しいことが多く、進行すると不正出血や性交時痛、不妊などの原因になる可能性があるとしています。
症状が軽いからといって、クラミジアを否定することはできません。
淋菌感染症(淋病)
淋菌感染症は、淋菌によって起こる性感染症です。
女性では、
- おりものが増える
- 下腹部が痛む
- 不正出血
- 性交時痛
- 発熱
などがみられることがあります。
一方で、感染していても症状が現れない場合があります。
感染が子宮や卵管へ広がると骨盤内炎症性疾患(PID)につながり、不妊などの原因となる可能性があるため、早期診断・治療が重要です。厚生労働省も、女性の淋菌感染症ではおりものの増加や下腹部痛などがみられるとしています。
腟トリコモナス症
腟トリコモナス症は、トリコモナス原虫によって起こる感染症です。
女性では、
- おりものが増える
- 黄色〜緑色っぽいおりもの
- 泡状のおりもの
- 普段と違う強いにおい
- 外陰部のかゆみや刺激感
- 排尿時の違和感
などがみられることがあります。
ただし、感染していても無症状の場合があります。CDCでは、トリコモナス感染者の多くに明確な症状がみられないことがあるとされています。
厚生労働省の性感染症情報でも、女性のトリコモナスでは「おりものの増加・臭い・かゆみ」などが主な症状として挙げられています。
性感染症以外でもおりものが変化することがある
おりものの異常があるからといって、すべてが性感染症というわけではありません。
代表的なのが、細菌性腟症や腟カンジダ症です。
細菌性腟症
細菌性腟症(BV)は、腟内の細菌バランスが崩れることで起こる状態です。
性感染症そのものとは一般に区別されますが、性行為や新しい性的パートナーなどとの関連がみられることがあります。CDCでは、性行為をしていない人にも起こり得る一方、新しいパートナーや複数のパートナーなどが腟内細菌のバランスに影響する可能性があるとしています。
症状としては、
- 灰白色〜白色のさらさらしたおりもの
- 魚のような特徴的なにおい
- 性行為後ににおいが目立つ
などがあります。
腟カンジダ症
腟カンジダ症は、主にカンジダという真菌が増殖することで起こります。
性交後に症状を自覚することもありますが、通常は典型的な性感染症として扱われる病気ではありません。 CDCの性感染症診療ガイドラインでも、外陰腟カンジダ症は通常、性行為によって獲得する感染症ではないとされています。
代表的な症状は、
- 強い外陰部のかゆみ
- 白くポロポロしたおりもの
- カッテージチーズ・ヨーグルト状のおりもの
- 外陰部の赤みやヒリヒリ感
- 性交時痛
などです。
洗浄剤やコンドームなどによる刺激
性感染症や腟炎以外に、
- ボディソープ
- デリケートゾーン用洗浄剤
- 腟洗浄
- 潤滑剤
- コンドームの素材や添加物
などが刺激となり、外陰部の違和感や分泌物の変化につながる場合もあります。
腟内を繰り返し洗浄すると正常な細菌環境が乱れることがあるため、おりものが気になるからといって過度な腟洗浄を行うことは避けましょう。
おりものの色・におい・症状から考えられる原因
おりものの状態だけで病気を確定することはできませんが、受診を考える際の参考にはなります。
| おりもの・症状の特徴 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 透明〜白色で強いにおいがなく、一時的に量が増えた | 性的興奮による分泌液、精液、排卵期など |
| おりものが増え、不正出血や下腹部痛がある | クラミジア、淋菌感染症、子宮頸管炎など |
| 黄色〜緑色で泡状、におい・かゆみがある | 腟トリコモナス症など |
| 灰白色で魚のようなにおいがする | 細菌性腟症など |
| 白くポロポロして強いかゆみがある | 腟カンジダ症など |
| 血が混じる・性交後に出血する | 性交による傷、子宮頸管炎、子宮頸部ポリープなど |
ただし、症状が典型的でないケースも少なくありません。自己判断で市販薬を使用すると原因が分かりにくくなる場合もあるため、初めての症状や性感染症の可能性がある場合には医療機関で相談することをおすすめします。
「性行為の翌日に増えた=昨日感染した」とは限らない
性行為の直後や翌日におりものが増えると、「昨日の相手から性感染症をうつされたのでは」と考えるかもしれません。
しかし、症状が出たタイミングだけから感染した時期や相手を特定することはできません。
性感染症には、感染してから症状が出るまで一定の期間があるものや、長期間無症状のまま経過するものがあります。
例えばクラミジアは無症状のケースが多く、感染していても本人が気づかないことがあります。
そのため、性行為翌日の症状だけを根拠に「直前の性行為で感染した」「パートナーが浮気した」などと判断することはできません。
こんなおりもの・症状があれば婦人科を受診しよう
次のような変化がみられる場合は、婦人科などの医療機関への受診を検討しましょう。
- おりものの増加が続いている
- 黄色・緑色・灰色など、普段と違う色になった
- 魚のようなにおいなど、強い悪臭がある
- 外陰部に強いかゆみや痛みがある
- 排尿時に痛みや違和感がある
- 性交時に痛みがある
- 性交後の出血や不正出血がある
- 下腹部痛がある
- 新しいパートナーとの性行為後に症状が出た
- コンドームを使用しない性行為があり、性感染症が心配
- パートナーが性感染症と診断された
性感染症は無症状の場合もあるため、症状がなくても感染する機会があった場合には検査を検討できます。厚生労働省も、性感染症では積極的な検査と医療機関への受診による早期発見・早期治療が重要としています。
強い下腹部痛や発熱がある場合は早めの受診を
おりものの異常だけでなく、
- 強い下腹部痛
- 発熱
- 吐き気・嘔吐
- 性交時の強い痛み
- 不正出血
などを伴う場合には、感染が子宮や卵管などへ広がっている可能性もあります。
クラミジアや淋菌などが上行感染すると骨盤内炎症性疾患(PID)を起こすことがあり、将来的な不妊や異所性妊娠などのリスクにつながる可能性があります。
特に強い腹痛や高熱がある場合は、様子を見続けず早めに医療機関を受診してください。
性感染症が心配なときは何科を受診する?
おりものの異常がある女性は、基本的には婦人科・産婦人科で相談できます。
症状や性行為の状況に応じて、
- おりものや腟分泌物の検査
- 子宮頸部から採取する検査
- 尿検査
- 血液検査
などが行われます。
クラミジアや淋菌については、尿や子宮頸部の分泌物、おりものなどを用いて検査が行われます。
また、オーラルセックスをしている場合には咽頭に感染することもあるため、必要に応じて性行為の内容も医師に伝えましょう。
なお、感染直後では検査で正確に判定できない感染症もあります。検査を受ける適切な時期は病原体や検査方法によって異なるため、「いつ性行為をしたか」を医療機関に伝えたうえで相談してください。
パートナーがいる場合は一緒に対応することが大切
クラミジアや淋菌感染症などが見つかった場合、自分だけ治療しても、感染しているパートナーから再び感染する可能性があります。
厚生労働省では、クラミジアや淋菌感染症と診断された場合、セックスパートナーも医療機関を受診して治療を受けること、治療が完了するまでは性交渉を避けることが重要としています。
医師から治療や性交渉再開について指示がある場合は、その指示に従いましょう。
性行為後のおりもの増加だけで性病とは判断できない
性行為後のおりものの増加は、
- 性的興奮による分泌液
- 精液や潤滑剤
- 月経周期による変化
- 性行為による刺激
などによって起こることがあり、必ずしも性感染症が原因とは限りません。
一方、クラミジアや淋菌感染症、トリコモナスなどによっておりものが変化することもあります。
特に、普段と違う色や強いにおい、かゆみ、排尿時痛、不正出血、性交時痛、下腹部痛などがある場合は受診のサインです。
また、性感染症は無症状のこともあります。「おりものが普通だから感染していない」とは判断できないため、コンドームを使用しない性行為や新しいパートナーとの性行為など感染の可能性が気になる場合には、婦人科などで検査について相談しましょう。
早めに原因を確認することが、適切な治療とパートナーへの感染予防につながります。

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