「陰部が強くかゆい」
「陰毛に白い粒のようなものが付いている」
といった症状がある場合、毛じらみ(ケジラミ)が原因の可能性があります。
毛じらみは、ケジラミという小さな寄生虫が主に陰毛などの体毛に寄生することで起こる外部寄生虫症です。性行為などの濃厚な身体接触で感染することが多いため、性感染症に関連する疾患として扱われますが、クラミジアや淋病のような細菌感染症とは異なります。
また、まれではあるものの、感染者が使用した衣類やタオル、寝具などを介して感染することもあります。
この記事では、毛じらみとはどのようなものか、どこからうつるのか、症状や見分け方、治療法、感染した場合の注意点までわかりやすく解説します。
毛じらみとは?
毛じらみとは、「ケジラミ(Phthirus pubis)」という吸血性の寄生虫が人の体毛に寄生することで起こります。
成虫は1〜2mm程度と小さく、カニのような形をしています。
主に陰毛に寄生しますが、場合によっては以下のような太い体毛にも寄生することがあります。
- わき毛
- 胸毛
- 腹部の毛
- ひげ
- 眉毛
- まつ毛
一般的なアタマジラミとは別の種類で、通常は頭髪に寄生することは多くありません。
なお、毛じらみは「不潔だから感染する」というものではありません。体を清潔にしていても、感染者との濃厚な身体接触があれば感染する可能性があります。
毛じらみはどこからうつる?主な感染経路
毛じらみは飛んだり跳ねたりすることができず、毛から毛へとはうように移動します。
そのため、主な感染経路は感染者との濃厚な身体接触です。
性行為などの濃厚な身体接触
最も一般的なのは、性行為などによって感染者の陰毛や体毛と直接接触するケースです。
性器そのものの接触だけでなく、毛じらみが寄生している体毛同士が接触することで感染する可能性があります。
そのため、挿入を伴わない性的接触でも感染することがあります。
衣類・タオル・寝具から感染することもある
頻度は高くありませんが、感染者が使用したものを共用することで毛じらみが移る可能性があります。
例えば、
- 下着
- 衣類
- タオル
- シーツ
- 枕カバー
- 布団などの寝具
などです。
ただし、ケジラミは人の体から離れると長期間生存できないため、感染経路の中心は人と人との濃厚な接触です。
トイレやお風呂でうつる可能性は低い
公衆トイレの便座や浴槽を利用しただけで毛じらみに感染する可能性は高くありません。
毛じらみは人の体毛にしがみついて生活しており、通常は宿主から離れて積極的に移動するわけではないためです。
コンドームで毛じらみを予防できる?
コンドームだけで毛じらみを完全に予防することはできません。
毛じらみは精液や膣分泌液を介して感染するのではなく、感染した体毛との接触によって移動するためです。
コンドームで覆われていない陰毛や周辺の体毛が接触すれば、感染する可能性があります。
ただし、コンドームはクラミジア、淋病、HIVなど、ほかの性感染症の感染リスクを下げるうえで重要です。
毛じらみの主な症状
毛じらみの代表的な症状は、寄生している部位の強いかゆみです。
ただし、感染してすぐに症状が出るとは限りません。
陰部などの強いかゆみ
毛じらみが吸血する際の唾液などに対して皮膚が過敏反応を起こすことで、強いかゆみが生じます。
特に陰毛が生えている部分に症状が出やすく、夜間にかゆみを強く感じることもあります。
強くかき続けると皮膚が傷つき、炎症や細菌感染を起こすこともあります。
赤色・青みがかった斑点
ケジラミに吸血された部分に、赤い斑点や青みがかった斑点がみられることがあります。
陰毛に虫や卵が付着する
陰毛の根元付近をよく見ると、小さな成虫や卵が確認できる場合があります。
卵は白色〜黄白色の小さな粒のように見え、毛に強く付着しているのが特徴です。
下着に暗赤色〜茶褐色の点が付く
ケジラミの排泄物によって、下着に暗赤色〜茶褐色の小さな点が付くことがあります。
症状がほとんどないこともある
毛じらみに感染していても、必ず強いかゆみが出るわけではありません。
症状が軽く、陰毛に付着した虫や卵を偶然見つけて気づくケースもあります。
毛じらみは感染してからいつ症状が出る?
初めて毛じらみに感染した場合、かゆみなどの症状が現れるまで1〜3週間程度かかることがあります。
そのため、「今日かゆみが出たから、数日前の性行為で感染した」といったように、症状が出た時期だけから感染時期を特定することはできません。
また、症状が軽い場合には長期間気づかないこともあります。
毛じらみが見つかったとしても、感染した時期や相手を正確に特定することは困難です。
毛じらみの見分け方
毛じらみは肉眼でも確認できる大きさですが、非常に小さいため見つけにくいことがあります。
成虫の特徴
成虫は1〜2mmほどで、灰色〜褐色に見えます。
陰毛の根元付近にしがみついており、よく観察すると動いていることがあります。
卵の特徴
卵は毛の根元付近にしっかりと固定されています。
フケと似て見えることがありますが、フケは比較的簡単に払い落とせるのに対し、ケジラミの卵は毛に強く固着しているため簡単には取れません。
ほかの病気との見分けが難しいこともある
陰部のかゆみは、毛じらみだけで起こるわけではありません。
例えば、
- 疥癬
- 接触性皮膚炎
- 湿疹
- 毛嚢炎
- カンジダ症
などでも似た症状が出ることがあります。
虫や卵が見つからない場合や、症状だけでは判断できない場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
毛じらみの検査・診断方法
毛じらみには、クラミジアのような尿検査や梅毒のような血液検査があるわけではありません。
基本的には、感染が疑われる部分を観察し、成虫や卵が付着しているかどうかを確認して診断します。
必要に応じて、拡大鏡などを使って確認することもあります。
また、毛じらみは性行為を介して感染するケースが多いため、ほかの性感染症に同時感染している可能性も考慮する必要があります。
性行為による感染が疑われる場合や、ほかの性感染症にも心当たりがある場合は、HIV、梅毒、クラミジア、淋病などの検査について医師に相談するとよいでしょう。
毛じらみの治療法
毛じらみは、自然にいなくなることを期待するのではなく、適切に駆除する必要があります。
シラミ駆除薬を使用する
日本では、ケジラミの駆除に使用できる市販のシラミ駆除薬があります。
代表的なものとして、フェノトリンを有効成分とする製品があります。
シラミ駆除薬は成虫や幼虫には作用しても、卵には十分な効果が得られない場合があります。そのため、卵から孵化した幼虫を駆除する目的で、一定の間隔をあけて複数回使用する製品があります。
使用回数や間隔は製品によって異なるため、必ず添付文書に記載された用法・用量を守ってください。
規定どおり使用しても生きた虫が確認できる場合や、症状が改善しない場合は、医師や薬剤師へ相談しましょう。
陰毛を剃るだけでは十分ではない
陰毛を剃れば毛じらみが治ると思われることがありますが、剃毛だけでは十分な治療になりません。
ケジラミは陰毛以外の体毛に寄生することもあり、剃毛だけで虫や卵を確実に除去できるとは限らないためです。
基本的には適切な駆除薬を使用することが重要です。
眉毛やまつ毛に寄生している場合は自己判断で薬を使わない
眉毛やまつ毛にケジラミが寄生することもあります。
ただし、シラミ駆除薬の中には目や目の周囲に使用できないものがあります。
眉毛やまつ毛に虫や卵が付いている場合は、自己判断で市販薬を塗らず、皮膚科や眼科などの医療機関に相談してください。
治療後も卵やかゆみが残ることはある?
治療後も、毛に卵や卵の殻が付着して残ることがあります。
そのため、白い粒が見えるからといって、必ずしも治療に失敗しているとは限りません。
また、虫が駆除されたあともしばらく皮膚の炎症や過敏反応が残り、かゆみが続くことがあります。
一方で、
- 生きた虫が確認できる
- 症状が改善しない
- かゆみが強くなっている
- 皮膚が腫れたり化膿したりしている
といった場合は、再度医療機関や薬剤師に相談しましょう。
衣類・寝具の処理も必要
体にいるケジラミだけを駆除しても、衣類や寝具に虫が残っていると再感染する可能性があります。
感染していた期間に使用した、
- 下着
- 衣類
- タオル
- シーツ
- 枕カバー
- 寝具
なども処理しましょう。
具体的な洗濯・熱処理方法については、使用するシラミ駆除薬の添付文書に従うことが大切です。
国内の製品では、洗濯前に60℃以上のお湯に5分以上浸す方法などが案内されているものがあります。
洗濯できないものについては、袋に密閉して一定期間使用しないなどの対応が必要になる場合があります。
なお、部屋全体へ殺虫剤を大量に散布する必要はありません。
パートナーも一緒に対応したほうがよい?
毛じらみが性行為によって感染した可能性がある場合は、パートナーにも感染している可能性があります。
自分だけ治療しても、パートナーが感染したままであれば、再び感染することがあります。
特に直近1か月程度に性交渉があったパートナーについては、感染の可能性を伝え、確認や治療について相談することが大切です。
本人とパートナー双方の治療が完了し、衣類や寝具の処理も終わるまでは、性行為を含む濃厚な身体接触を控えましょう。
毛じらみになったら浮気が原因?
毛じらみが見つかったからといって、パートナーの浮気が原因だと断定することはできません。
毛じらみは性行為などの濃厚な身体接触で感染することが多いものの、症状が出るまでに時間がかかることがあり、感染してから長期間気づかないケースもあります。
また、頻度は高くありませんが、感染者が使用した衣類や寝具などを介して感染する可能性もあります。
そのため、毛じらみが見つかった時期だけから、いつ・誰から感染したのかを特定することはできません。
毛じらみが疑われる場合は何科を受診する?
毛じらみが疑われる場合は、以下のような医療機関で相談できます。
- 皮膚科
- 泌尿器科
- 婦人科
- 性感染症を扱うクリニック
特に、
- 虫や卵なのか判断できない
- 市販薬を使用しても改善しない
- 生きた虫が治療後も確認できる
- 皮膚をかき壊して腫れや膿がある
- 眉毛やまつ毛にも寄生している
- 妊娠中・授乳中で薬の使用に不安がある
- ほかの性感染症にも心当たりがある
といった場合は、医療機関へ相談しましょう。
毛じらみに関するよくある質問
毛じらみは自然に治りますか?
自然治癒を期待して放置することはおすすめできません。
治療しないままではケジラミが吸血・産卵を続け、ほかの人へ感染させる可能性もあります。
適切なシラミ駆除薬を使用して治療しましょう。
毛じらみはペットからうつりますか?
基本的に、犬や猫などのペットからケジラミがうつることはありません。
人に寄生するケジラミは、人を宿主とする寄生虫だからです。
毛じらみに感染すると一生治らないのですか?
適切に治療すれば、毛じらみは基本的に駆除できます。
ただし、パートナーが未治療だったり、衣類や寝具の処理が不十分だったりすると再感染する可能性があります。
治療だけでなく、身の回りのものやパートナーへの対応も同時に行うことが大切です。
まとめ
毛じらみは、ケジラミという小さな寄生虫が主に陰毛などの体毛に寄生することで起こる外部寄生虫症です。
主な感染経路は性行為などの濃厚な身体接触ですが、まれに衣類やタオル、寝具などを介して感染することもあります。
代表的な症状は陰部などの強いかゆみで、陰毛の根元に成虫や卵が付着していることも特徴です。
治療には適切なシラミ駆除薬を使用し、衣類や寝具の処理、パートナーへの対応もあわせて行う必要があります。
また、治療後も卵の殻やかゆみがしばらく残ることがあり、それだけで治療失敗とは限りません。ただし、生きた虫が確認できる場合や症状が改善しない場合は、医療機関へ相談しましょう。
毛じらみは性行為を介して感染することが多いため、感染機会によってはクラミジア、淋病、梅毒、HIVなど、ほかの性感染症についても検査を検討することが大切です。


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