「クラミジアや淋病の検査は陰性だったのに、排尿時の違和感や分泌物が続いている」
このような場合、原因のひとつとして考えられるのがマイコプラズマ・ジェニタリウム感染症です。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは主に性的接触によって感染する細菌で、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎などの原因になります。一方で、感染していても症状が出ないケースがあるため、自分では感染に気づかないこともあります。
厚生労働省も、性的接触によって感染する可能性のある感染症としてマイコプラズマ・ジェニタリウムを挙げています。
さらに近年問題となっているのが抗菌薬が効きにくい薬剤耐性菌の増加です。
日本性感染症学会の「性感染症 診断・治療ガイドライン2026」でも、マイコプラズマ・ジェニタリウムについて症状・検査・薬剤耐性・治療がそれぞれ取り上げられています。
この記事では、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症の症状や感染経路、検査方法、治療についてわかりやすく解説します。
マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症とは?
マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症とは、マイコプラズマ・ジェニタリウムという細菌によって起こる性感染症(STI)のひとつです。
主に尿道や子宮頸管、直腸などに感染します。
男性の非淋菌性尿道炎の原因として重要な細菌であり、CDC(米国疾病予防管理センター)によると、非淋菌性尿道炎の約15~20%、クラミジア以外による非淋菌性尿道炎の約20~25%、持続・再発する尿道炎では約40%からマイコプラズマ・ジェニタリウムが検出されるとされています。
また、一般的な細菌とは異なり細胞壁を持たないことも特徴です。
そのため、ペニシリン系やセフェム系など細胞壁を標的とする抗菌薬は基本的に効果がありません。
なお、「マイコプラズマ肺炎」の原因となる肺炎マイコプラズマとは別の細菌です。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは性病なの?
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、性的接触によって感染する性感染症です。
厚生労働省では、非クラミジア性非淋菌性尿道炎・子宮頸管炎の原因となる微生物としてマイコプラズマ・ジェニタリウムを紹介しています。
ただし、感染したからといって必ず症状が出るわけではありません。
症状のない人からパートナーへ感染する可能性もあるため、「症状がないから感染していない」とは判断できません。
CDCも、無症状の感染者から他人へ感染する可能性があると説明しています。
マイコプラズマ・ジェニタリウムの感染経路
主な感染経路は感染者との性的接触です。
特に、
- コンドームを使用しない膣性交
- コンドームを使用しない肛門性交
- 性器や粘膜が接触する性行為
などによって感染する可能性があります。
CDCでは、膣性交や肛門性交による感染が確認されている一方、オーラルセックスによる感染については、どの程度感染が成立するのかまだ十分に明らかになっていないとしています。
そのため、「オーラルセックスなら絶対に感染しない」と考えるのは避けたほうがよいでしょう。
マイコプラズマ・ジェニタリウムの潜伏期間は?
マイコプラズマ・ジェニタリウムについては、感染してから症状が出るまでの潜伏期間がはっきり確立されていません。
カナダの公衆衛生当局やBASHH(英国性感染症・HIV学会)も、マイコプラズマ・ジェニタリウムの潜伏期間を特定するための十分なデータはないとしています。
したがって、
「性行為から○週間後に症状が出たから、この相手から感染した」
と潜伏期間だけをもとに感染時期や感染相手を断定することは困難です。
また、無症状のまま感染が続くこともあるため、陽性になった時点から感染した時期を逆算することも基本的にはできません。
男性にみられる主な症状
男性では、主に尿道炎を起こします。
代表的な症状は、
- 排尿時の痛み・しみる感じ
- 尿道の違和感やかゆみ
- 尿道から透明~白色、膿状の分泌物が出る
- 尿道の不快感
- 亀頭や包皮の赤み・腫れ
などです。
症状の強さには個人差があり、強い排尿痛がみられる場合もあれば、軽い違和感程度の場合もあります。
日本性感染症学会のガイドライン作成過程で公表された資料でも、男性では尿道分泌物や尿道痛を中心に、軽い尿道掻痒感・不快感から強い症状まで幅があるとされています。
特に、
「クラミジアや淋菌の治療を受けたのに尿道炎が治らない」
という場合には、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染が疑われることがあります。
女性にみられる主な症状
女性の場合は症状がないことも少なくありません。
症状がある場合には、
- おりものの増加・変化
- 排尿時の痛み
- 性交後の出血
- 生理以外の不正出血
- 性交時の痛み
- 下腹部痛
などがみられることがあります。
症状だけではクラミジアや淋菌、細菌性腟症などほかの病気との区別が難しいため、原因を確認するには検査が必要です。
放置するとどうなる?
男性では、感染によって尿道炎が長引いたり、再発を繰り返したりすることがあります。
一方、女性では特に注意が必要です。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患(PID)との関連が確認されています。
PIDによって卵管などに炎症や瘢痕が生じると、
- 不妊
- 子宮外妊娠
- 慢性的な下腹部痛
などにつながる可能性があります。
CDCも、女性のマイコプラズマ・ジェニタリウム感染についてPIDなどとの関連を示しています。
ただし、男性の不妊症や前立腺炎など長期的な合併症との関係については、現時点では十分なデータがそろっていません。
マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査方法
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、一般的に核酸増幅検査(NAAT)によって調べます。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは培養が非常に難しく、CDCによれば培養には最大6か月程度かかることもあるため、通常の診療では遺伝子を検出する検査が中心となります。
検体としては、
男性
- 初尿
- 尿道などから採取した検体
女性
- 腟ぬぐい液
- 子宮頸管などから採取した検体
などが使用されます。
BASHHの2025年ガイドラインでは、男性では初尿、女性では腟スワブが推奨される検体とされています。
医療機関や検査サービスによって対応している検体や検査方法が異なるため、事前に確認するとよいでしょう。
感染してから何日後に検査すればいい?
「性行為から何日後なら正確に検査できるの?」と気になる方も多いでしょう。
しかしマイコプラズマ・ジェニタリウムについては、感染から検査が確実に陽性になるまでの「ウインドウ期間」も明確には確立されていません。
BASHHのガイドラインでも、潜伏期間および検査が確実に陽性になるまでの期間について十分なデータがないとされています。
そのため、感染機会の直後に検査して陰性だった場合でも、症状や感染状況によっては医師から再検査を勧められることがあります。
排尿痛や分泌物、不正出血などの症状がある場合は、自己判断で検査時期を待つのではなく、早めに医療機関へ相談しましょう。
無症状でも検査したほうがいい?
マイコプラズマ・ジェニタリウムは無症状感染がありますが、だからといって症状のないすべての人に一律で検査が推奨されているわけではありません。
CDCや2026年に更新された米国NYSDOH AIの臨床ガイドラインでは、無症状者へのルーチンスクリーニングは推奨しておらず、
- 尿道炎が治らない・繰り返す
- 子宮頸管炎が治らない・繰り返す
- 骨盤内炎症性疾患(PID)が疑われる
といった場合の検査が重視されています。
ただし、パートナーがマイコプラズマ・ジェニタリウム陽性だった場合などは対応が異なる可能性があるため、医師に相談してください。
マイコプラズマ・ジェニタリウムの治療法
治療には抗菌薬を使用します。
ただし、マイコプラズマ・ジェニタリウムでは現在、薬剤耐性が大きな問題になっています。
これまで使用されてきたマクロライド系抗菌薬に対する耐性が増加しているだけでなく、フルオロキノロン系抗菌薬への耐性も報告されています。
CDCでは、マクロライド耐性に関連する遺伝子変異が各国で高い割合で確認されているとしています。
日本性感染症学会のガイドライン作成資料でも、薬剤耐性が進行しており、前に使用した薬剤や治療効果、耐性の状況を考慮して治療薬を選択する必要があるとされています。
そのため、現在は単に「この薬を飲めば必ず治る」という感染症ではありません。
治療では、
- 過去に使用した抗菌薬
- 症状
- 薬剤耐性の可能性
- 妊娠の有無
- 副作用や持病
- 治療後の検査結果
などを考慮して医師が薬を選択します。
余っている抗菌薬を飲んだり、個人輸入した薬を自己判断で使用したりするのは避けましょう。
不適切な抗菌薬の使用は治療に失敗するだけでなく、さらに薬剤耐性を増やす原因になる可能性があります。
治療しても治らないことはある?
あります。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは薬剤耐性が増えているため、適切に薬を服用しても感染が残るケースがあります。
治療後も、
- 排尿痛が続く
- 分泌物が続く
- 不正出血や下腹部痛が続く
といった場合には、再び医療機関を受診してください。
必要に応じて再検査や別の抗菌薬による治療が検討されます。
一方、治療後の全員に必ず同じタイミングで再検査が必要とは限りません。
使用した治療法や症状、耐性の可能性などによって対応が異なるため、治癒確認の時期は担当医の指示に従うことが重要です。
CDCも、推奨治療を受けて無症状となった人について、一律の治癒確認検査を求めてはいません。
パートナーも検査したほうがいい?
マイコプラズマ・ジェニタリウムに感染した場合は、現在の性的パートナーについても医療機関へ相談することが重要です。
自分だけ治療しても、パートナーが感染したままであれば、性行為によって再び感染する可能性があります。
CDCでは、症状のあるマイコプラズマ・ジェニタリウム感染者のパートナーについて検査を行い、陽性の場合には治療することが再感染予防のために検討されています。
「どちらが先に感染したのか」を追及するのではなく、まずは2人とも適切に検査・治療を受けることが大切です。
治療中は性行為をしてもいい?
治療中の性行為は控えましょう。
CDCでは、本人とパートナーの双方が治療を完了し、症状がなくなるまで性行為を再開しないよう案内しています。
治療途中で性行為をすると、
- パートナーへ感染させる
- パートナーから再感染する
といった可能性があります。
具体的にいつから性行為を再開できるかは治療内容によって異なるため、処方を受けた医療機関の指示に従ってください。
マイコプラズマ・ジェニタリウムを予防するには?
感染リスクを下げるためには、コンドームを適切に使用することが重要です。
厚生労働省も、性的接触によって感染する感染症の予防方法として性行為時の正しいコンドーム使用を挙げています。
ただし、コンドームによって性感染症のリスクを完全にゼロにできるわけではありません。
また、症状があるときやパートナーが性感染症と診断された場合には性行為を控え、必要に応じて検査を受けましょう。
マイコプラズマ・ジェニタリウムに関するよくある質問
マイコプラズマ・ジェニタリウムは自然治癒する?
感染が自然に消失するケースが存在する可能性はありますが、いつ自然に治るのかを予測することはできません。
特に症状がある場合や検査で陽性となった場合は、自己判断で放置せず医師に相談しましょう。
一度治ればもう感染しない?
いいえ。
一度治療して陰性になっても、免疫によって将来の感染を完全に防げるわけではありません。
感染しているパートナーとの性行為などによって再感染する可能性があります。
クラミジアや淋病と同時に感染することはある?
あります。
症状だけでは原因を区別できないため、尿道炎や子宮頸管炎の症状がある場合には、クラミジアや淋菌などほかの性感染症についても検査が検討されます。
感染したら浮気が原因?
陽性になったという事実だけで、最近の浮気や感染相手を断定することはできません。
マイコプラズマ・ジェニタリウムには無症状感染があり、潜伏期間や感染が成立した時期を正確に特定する方法も確立されていないためです。
過去の感染が長期間気づかれずに残っていた可能性も考慮する必要があります。
まとめ
マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症は、主に性的接触によって感染する性感染症です。
男性では尿道炎による排尿痛や尿道分泌物、女性ではおりものの変化や不正出血などがみられることがありますが、感染していても無症状の場合があります。
検査には主に核酸増幅検査が使用されます。
一方、感染から症状が出るまでの潜伏期間や、感染後いつから確実に検査できるのかについては、現在も明確な期間が確立されていません。
また、マイコプラズマ・ジェニタリウムでは薬剤耐性が増えているため、抗菌薬を自己判断で使用するのは避ける必要があります。
排尿時の痛みや分泌物、おりものの変化、不正出血などが続く場合や、クラミジア・淋菌の治療後も症状が改善しない場合は、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症も含めて医療機関へ相談しましょう。


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